明治33年 西暦1900年 旅商人を殺し、その肝を持ち去った二人の男 西暦1900年
商人は荷物を背負い、あるいは商品を携え、一つの村から次の村へ向かう。 日が暮れれば旅籠や知人宅へ泊まり、翌朝、再び街道を歩く。 そんな時代だった。 福島県白河地方にも、そうした旅人たちが行き交う道があった。 その街道を、一人の旅商人が歩いていた。 その男が、その日のうちに殺されることなど、本人はもちろん誰も知らなかった。 旅商人を殺したのは二人の男だった。
昭和・平成・令和に起きた事件を記録するノンフィクション・アーカイブ
商人は荷物を背負い、あるいは商品を携え、一つの村から次の村へ向かう。 日が暮れれば旅籠や知人宅へ泊まり、翌朝、再び街道を歩く。 そんな時代だった。 福島県白河地方にも、そうした旅人たちが行き交う道があった。 その街道を、一人の旅商人が歩いていた。 その男が、その日のうちに殺されることなど、本人はもちろん誰も知らなかった。 旅商人を殺したのは二人の男だった。
八丈岩の下方へ差しかかったときだった。 地面の一部が妙に新しい。土を掘り返した跡。 まるで、誰かが最近そこへ何かを埋めたように見える。 男は足を止めた。近づく。 そして土の間から突き出している小さなものに気づいた。 木の根ではない。枝でもない。 白っぽい。小さい。先端が分かれている。
足立区本木町付近には、近所の子供たちが「日の丸プール」と呼ぶ浅い入り江があった。 正式なプールではない。 葦の生える、ただの水辺だった。 昭和二十七年五月十日。 その場所を訪れた少女たちは、水辺に不審な包みがあることに気づいた。 新聞紙などで包まれ、麻ひもで縛られている。かなり大きい。 最初は、犬か猫の死骸ではないか。 そんなものに見えたのかもしれない。 しかし、包みの中から現れたものは、 動物ではなかった。人間だった。
一軒の家に、一つの郵便小包が届けられた。 箱を開ける。 中に入っていたのは一本のウイスキーだった。 当時の地方農村で、ウイスキーは現在ほど日常的な酒ではない。 誰かが贈ってくれた酒。 受け取った側がそう考えたとしても、不自然ではなかった。 ところが、その瓶の中には致死性の毒物が混入されていた。 最初に酒を口にした五十三歳の男性は、まもなく激しい中毒症状に襲われた。
北海道の一軒の住宅で、一人の女性が夫によって生命を奪われるという凄惨な事件が起きた。 事件について後年まとめられた北海道の資料には、正式な事件名というより、読む者の目を釘付けにする異様な言葉が残されている。 「女房の頭に五寸釘」 五寸。 現在の長さにすれば、およそ十五センチである。
九州大学工学部の大学院特別研究生だった。 当時としては、きわめて高い教育を受けた青年である。大学へ進学すること自体が珍しかった時代に、九州大学の大学院で研究を続けていた。社会から見れば、まさしく「将来を期待された青年」と呼ばれる立場だった。 ところが、その二人の恋愛は、やがて一つの妊娠によって大きく形を変えていく。 そして中島は、医師ではないにもかかわらず、義兄が所有していた医学書を読み、自分の手で照代に堕胎の処置を行うようになる。 一度目は、照代は死亡しなかった。 資料では、それを「成功」と記録している。
明治三十八年。 長野県の山間にある、小さな村。 その夜、神社では祭りが行われていた。 暗い山々の間に、提灯の灯りが並ぶ。 普段なら静まり返っている村にも、 この日ばかりは人々の笑い声が響いていた。 その人混みの中に、十六歳の少女がいた。 村の酒屋で働いている少女だった。 ところが――。 祭りが終わる頃、 少女の姿が見えなくなった。