明治33年 西暦1900年 旅商人を殺し、その肝を持ち去った二人の男 西暦1900年
商人は荷物を背負い、あるいは商品を携え、一つの村から次の村へ向かう。 日が暮れれば旅籠や知人宅へ泊まり、翌朝、再び街道を歩く。 そんな時代だった。 福島県白河地方にも、そうした旅人たちが行き交う道があった。 その街道を、一人の旅商人が歩いていた。 その男が、その日のうちに殺されることなど、本人はもちろん誰も知らなかった。 旅商人を殺したのは二人の男だった。
昭和・平成・令和に起きた事件を記録するノンフィクション・アーカイブ
商人は荷物を背負い、あるいは商品を携え、一つの村から次の村へ向かう。 日が暮れれば旅籠や知人宅へ泊まり、翌朝、再び街道を歩く。 そんな時代だった。 福島県白河地方にも、そうした旅人たちが行き交う道があった。 その街道を、一人の旅商人が歩いていた。 その男が、その日のうちに殺されることなど、本人はもちろん誰も知らなかった。 旅商人を殺したのは二人の男だった。
二人は、単なる男女ではなかった。 ナカは忠四郎の実兄の娘であり、忠四郎にとっては実の姪だった。 さらに明治二十四年ごろ、ナカは忠四郎の養女となっている。 つまり二人は、叔父と姪。養父と養女。 という二重の家族関係にあった。 ところが、その関係はいつしか一般的な親族関係から大きく逸脱していった。 資料によれば、二人は同じ家で夫婦同然の生活をするようになっていたのである。
明治三十八年。 長野県の山間にある、小さな村。 その夜、神社では祭りが行われていた。 暗い山々の間に、提灯の灯りが並ぶ。 普段なら静まり返っている村にも、 この日ばかりは人々の笑い声が響いていた。 その人混みの中に、十六歳の少女がいた。 村の酒屋で働いている少女だった。 ところが――。 祭りが終わる頃、 少女の姿が見えなくなった。
一人の少女が山林で襲われ、必死に帰ろうとした直後、犯罪の発覚を恐れた男によって命まで奪われたという、極めて重い事件だったことが分かる。