昭和28年 瓦屋町・菓子問屋一家四人殺害事件|19歳住み込み店員・松井永明
昭和28年(1953年)9月15日、大阪市南区瓦屋町。 菓子問屋「小柳商店」の二階で、店主夫婦と幼い娘二人が襲われた。 犯人は、外から侵入した強盗ではなかった。 一家と同じ建物で暮らし、約2年間にわたって働いていた19歳の住み込み店員・松井永明だった。 松井は以前から、長時間労働、少ない休日、粗末な食事、主人夫婦の態度などに強い不満を抱き、とくに店主の妻への反感を募らせていた。 事件のおよそ1年前にはすでに殺害を考え、ジャックナイフまで購入。 そして事件前日、仕事を言いつけられた際の言葉遣いに腹を立て、 「今夜、やろう」 と犯行を決意した。 翌朝午前5時ごろ。 眠っていた店主夫婦、3歳の長女、1歳の次女を次々と襲撃。 一家4人全員が命を落とした。 松井はほどなく逮捕され、裁判では犯行当時19歳という若さや労働環境、精神状態などが検討されたものの、最終的に死刑が確定する。 しかし事件は、一人の少年死刑囚の犯罪だけでは終わらなかった。 事件後、大阪労働基準局が松屋町筋の問屋街を調査し、朝早くから深夜まで続く勤務、少ない休日、外出制限など、当時の住み込み少年店員を取り巻く厳しい労働環境が表面化した。 過酷な労働環境は、決して一家4人殺害を正当化する理由にはならない。 それでも、なぜ19歳の店員が一年近く殺意を抱え続け、最後には何の責任もない幼い子どもまで襲ったのか。 少年犯罪、怨恨、住み込み労働、そして死刑判決。 戦後大阪の問屋街を震撼させた「瓦屋町・菓子問屋一家四人殺害事件」を追う。