大正11年 怪奇船・大輝丸事件|砂金採取船が海賊船へ変貌した大量殺人事件 ロシア船を襲撃 騎兵銃 日本刀 槍 弾薬 江連力一郎
大正11年(1922年)、東京・芝浦から一隻の船が北へ向かった。 船の名は「大輝丸」。 表向きの目的は、オホーツク方面での砂金採取だった。 約60人の男たちが集められ、夢見たのは北の海に眠る莫大な砂金と一攫千金。しかし船内には、騎兵銃32丁、日本刀67振り、槍18本、大量の弾薬、軍服など、砂金採取船とは思えないほどの武器が積み込まれていた。 一団を率いたのは江連力一郎。 軍務経験を持ち、海外を渡り歩いた冒険家気質の男だった。 ところが、冬の到来と海の結氷によって砂金採取計画は挫折する。 何も得ずに日本へ帰るのか。 それとも――。 ここから大輝丸の航海は異様な方向へ変わっていく。 武装した乗組員たちはロシア船を襲撃。船を奪い、積み荷を略奪し、乗組員を捕虜にした。 そして、 「生かして帰せば証人になる」 という論理から、捕らえた人々まで殺害していく。 砂金を探すはずだった船は、いつしか「海賊船」へ変わっていた。 江連は後に、尼港事件への復讐や「国のため」という思想を語る。しかし、海上で実際に起きたのは、武装集団による外国船襲撃、略奪、殺人、そして証拠隠滅だった。 しかも、この巨大犯罪を崩壊させたのは警察でも軍艦でもない。 帰国後の「分け前」をめぐる仲間割れだった。 砂金、一攫千金、冒険、愛国心、復讐、集団心理、そして殺人。 一隻の船はいかにして犯罪集団へ変貌したのか。 日本近代犯罪史でも異彩を放つ「怪奇船・大輝丸事件」を追う。