【『遠州船無人島物語』】
次の記録は、さらに異常な漂流談です。
タイトルは、
『遠州船無人島物語』
です。
この話の主人公たちは、なんと二十年以上、無人島で生活した人々です。
【二十一年ぶりに帰ってきた男たち】
元文四年五月。
長いあいだ消息不明になっていた遠州方面の船乗りたちが、日本へ帰ってきた。
漂流してから、
およそ二十一年。
帰国した男たちは役人に呼び出され、
「これまで何があったのか」
を詳しく尋ねられた。
そこで彼らは、自分たちの漂流生活を語り始める。
【十二人を乗せた船】
二十一年前。
遠州の船が江戸方面へ向かっていた。
船には船頭を含め、
十二人ほどの男たち
が乗っていた。
航海は最初、普通だった。
ところが突然、猛烈な風に襲われた。
帆を下ろす。
縄を切る。
船を軽くする。
できる限りのことをした。
しかし風は止まらない。
船は沖へ沖へと吹き流された。
夜になっても風は収まらなかった。
周囲には陸地が見えない。
どちらが東なのか、西なのかさえ分からなくなった。
【米を生のまま食べる】
船には、わずかな米が残っていた。
だが火を使うことが難しい。
そこで男たちは、
米を生のまま噛んで食べた。
水も乏しくなった。
腹は減る。
喉は渇く。
それでも、
「何か陸が見えるまで生きるしかない」
と耐えた。
漂流は何日も続いた。
【島影を発見】
やがて遠くに島らしいものが見えた。
最初は雲かと思った。
しかし時間がたっても消えない。
「島だ」
船の者たちは喜んだ。
だが島の周囲は岩だらけだった。
波も荒い。
船をそのまま岸へ着ければ、岩にぶつかって壊れる可能性が高い。
そこで何人かが先に小舟へ移り、島へ近づいた。
【十二人全員が上陸】
何度かに分けて人を運んだ。
そして最終的に、
十二人全員が島へ上陸した。
まもなく本船は岩へぶつかり、壊れてしまった。
日本へ戻るための船は失われた。
十二人は完全に孤立した。
周囲を見ても、
家がない。
畑がない。
人がいない。
煙も上がっていない。
完全な無人島だった。
